【年金・医療】財政難の厚年基金5年で解散、10年かけ制度廃止 救済の線引き曖昧 自助努力なし崩しも

厚生労働省は11月2日、厚生年金基金制度の改革案を公表しました。財政難に陥っている基金を5年以内に集中的に解散させたうえで、10年かけて制度を廃止するといいます。基金が公的年金部分の積み立て不足を自助努力で解消できない場合に、会社員や企業が納めた公的な厚生年金保険料で穴埋めし、自主的な解散を促します。健全な基金や自民党はこの案に反対しており、厚労省案が実現するかは不明です。

同省は審議会で成案を2012年末までにまとめ、2013年の通常国会に関連法案の提出を目指します。その中には中小企業が加入しやすい新しい確定拠出年金の設立も盛り込みます。

これまでは年金受給者に配慮し、基金解散を厳しく規制してきましたが2012年2月に起きたAIJ投資顧問の年金消失事件を機に、厚年基金制度をこれ以上存続させることは難しいと判断したようです。

改革案は、当初の5年間を集中処理期間と位置づけたうえで、財政難の基金の解散を促します。現行制度では公的年金部分の積み立て不足を解消しない限り解散を認めていません。解散したくても解散できない基金が多いのが現状です。

厚年基金の運用は本来、自己責任です。しかし今回の改正では、最終的には厚生年金保険料で穴埋めせざるを得なくなることが考えられます。過去に公的年金部分を国に返上した厚年基金は自己負担で損失を補填してきました。中小企業が集まる総合型基金の中には、不足額の穴埋め負担で母体企業の連鎖倒産が起きた例もあるほどです。今回の改正案は基金のモラルハザードを助長しかねません。

財政が健全な基金は、10年かけて確定給付企業年金や確定拠出企業年金への移行を求められます。

OB年金の減額基準の緩和は今秋以降に検討する項目としていましたが、今回の改革案には盛り込まれませんでした。