厚生労働省は2012年6月25日、宮城県内の印刷業の事業場で働いていた男性2人が、仕事が原因で胆管がんになったとして労災を申請したと発表しました。印刷業で働く人の胆管がんによる労災申請は、大阪市の印刷会社の元従業員ら6人から相次いで出ており、申請者はこれで計8人になりました。
申請は25日付。2人は30代と40代で、同じ事業場で働いていました。厚労省は、2人や事業場の名前などは明らかにしていません。
厚労省の聞き取りによると、2人は窓を閉め切った状態で長時間、印刷機の洗浄作業をし、マスクや手袋は使っていなかったということです。事業場は東日本大震災で被災したため、2人は今は同じ会社の別の事業場で働いています。同省は、宮城県で胆管がんで死亡した男性の遺族から5月に相談があったことを明らかにしていますが、今回の2人とは別人で会社も別といいます。
大阪での労災申請を受け、厚労省は現在、同様の作業をしている全国の印刷会社約500社の調査を進めています。この2人が働いている会社の調査も終えていますが、会社側が2人の発症を把握していたかどうかは明らかにしていません。
厚労省は、大阪市の印刷会社で新たに1人が胆管がんになり、死亡していたことがわかったことも明らかにしました。この結果、大阪での死亡は6人となりました。
大阪のこの会社の実態を調べた熊谷信二・産業医科大准教授は、印刷機の洗浄剤に含まれていた「ジクロロメタン」などの化学物質が原因となった可能性を指摘しています。厚労省は、宮城県の2人が働いていた事業場でも同じ化学物質入りの洗浄剤が使われていたか調べています。
大阪の会社の元従業員男性は「問題が広がっていくようでこわい。排気設備の整っていない印刷会社が多いのかもしれない。従業員を守る環境づくりを進めてほしい」と話しました。