厚生労働省は自前で退職金制度を持てない中小企業が加入する中小企業退職金共済制度(中退共)で、退職金を減額する検討を始めました。2012年度中に予定運用利回りの引き下げや、運用実績が想定を上回った場合に加入者に支給する付加退職金の減額などの結論を出すということです。運用難で深刻な積み 立て不足に陥っていることから、中長期にわたり持続可能なしくみに改めます。
厚生労働相の諮問機関である労働政策審議会で議論します。中退共は株式市場の低迷で運用実績が悪化し、11年度末時点で1741億円の累積欠損金を抱えています。05年に17年度までの財政健全化計画をたてたものの、11年度末時点の累積欠損金は計画の目標値である1023億円を大幅に上回りました。厚労省は制度を持続させるためには、退職金減額はやむを得ないとの判断に傾きました。
具体策として、予定運用利回りを現在の1%から0.8%程度まで引き下げることを検討します。02年に3%から1%に引き下げた時には、毎月1万円の掛け金で10年納付した人のケースで退職金は約14万円減りました。運用利率の引き下げにあわせて、毎月の最低掛け金を現在の5千円から増やして不足している積立金の上積みに充てる案も検討しています。
基礎退職金に追加して加入者に支給している「付加退職金」を減額する案も有力です。運用益が出た場合、半分を受給者に支給しているが、支給する割合を下げることで積立金に充当します。大和総研の菅野泰夫主任研究員は「中退共は制度の抜本的見直しができなければ、制度廃止の可能性もでてくる」と指摘します。
厚労省は中小企業の企業年金である厚生年金基金制度は廃止の方針を決めました。財政が健全な厚年基金の一部には中退共の制度を改革し、移行先として検討したいとの声も出ています。