厚生労働省は2012年10月16日、後期高齢者医療制度(75歳以上対象)に対する現役世代の支援金に関し、賃金の高い大企業の負担が重くなる「総報酬割り」の13年度からの全面導入を断念する方針を固めました。
政府はサラリーマンの健康保険の格差是正に向けて税と社会保障の一体改革大綱に「総報酬割りの検討」を盛り込み、同省は13年度からの実施を目指していましたが、負担増に直結する大企業中心の健康保険組合連合会(健保連)の理解が得られないと判断しました。
後期医療の財源の約4割(12年度5兆5000億円)は現役世代の支援で賄っており、各医療保険が加入者数に応じて分担しています。ただし、サラリーマンの健康保険では12年度まで3年間の特例措置で3分の1を総報酬割りで捻出しており、12年度の負担額は、健保組合1兆5100億円、全国健康保険件協会(協会けんぽ)1兆6100億円、公務員らの共済組合4900億円となっています。
現在のルールでは、平均賃金は低くとも加入者の多い健保は負担が重くなっています。中小企業中心で所得水準の低い協会けんぽにしわ寄せがいくため、厚労省は総報酬割りの13年度からの全面導入を検討していました。全面導入で協会けんぽの負担は約2000億円減る見込みです。その分の国庫補助を削れるとの判断もありました。
しかし一方で、大企業の健保は計1100億円の負担増となります。平均年収600万円の健保なら個人の負担増は月四千数百円(労使折半)で、健保連側は強く反発しています。09年度は5000億円近い赤字だった協会けんぽも11年度は約2500億円の黒字が見込まれ、「協会けんぽ支援」を理由とするのも困難な状況です。このため厚労省は13年度の全面導入は断念し、現在の特例の1年延長を軸に関係者と調整する方針に転じました。