政府は11月30日、今後の社会保障制度を検討する社会保障制度改革国民会議の初会合を開きました。議論の主な対象は年金、医療、介護、少子化で、制度の持続性を高めるための年金や高齢者医療改革が課題です。年金の支給開始年齢引き上げなど給付抑制策が議論の焦点になる見通しですが、衆院選後の政治情勢によって議論の行方は流動的だが、大胆な改革案を打ち出す役割が期待されます。
国民会議は民自公の3党合意で、2013年8月21日までの設置が決まっています。委員は首相が選びますが、3党が推薦名簿を出して調整した経緯があるだけに、人選には各党の思惑がにじんでいます。
年金は民主党が最低保障年金の創設を掲げ、自公は現行制度の改善を目指しています。民主と自公案の隔たりは大きく、国民会議の委員の間でも意見が割れている状態です。
民主党案に近い制度を提唱している案として、保険料の未納問題や無年金・低年金者が増える現行制度の問題点を解決するには、税金を財源とする最低保障年金が必要だとの考えが根底にあります。
一方、民主案に否定的で、現行制度の存続を主張する意見もあります。いずれにしても、現行制度でも給付抑制策は欠かせないといいます。
この場合、議論の焦点となるのが年金の支給開始年齢の再引き上げにあります。会長の清家篤慶応義塾長は「生涯現役社会」が持論で、現在の65歳から68歳への引き上げを提起したことがあります。清家会長は11月30日の記者会見で「議論は排除せず、中立的に取り上げる」と述べました。
年金額を抑制する「マクロ経済スライド」という現行ルールも論点の一つです。デフレ下では発動できないルールがあるため、「今後も物価や賃金の伸びが期待できない以上、デフレ下でも発動する仕組みが必要だ」とし、国民会議で議論する考えもあります。
医療では、医療の充実を求める医師と、高齢者の負担増を容認する学者との間の意見調整が難しい状況です。資産のある高齢者に負担増を求める立場だという意見に対し、「治すだけの医療から、医療と介護の連携など量的、質的な拡大が大事だ」とし、意見が対立しています。
民主党も自らの抜本改革案について、今回の衆院選マニフェストでは「3党合意に沿って、国民会議の議論を経た上で実現を目指す」と記すにとどめ、3年前のマニフェストより表現を後退させました。政権交代以降、年金や高齢者医療の改革が進みにくくなっていることもあり、厚労省内には「早く決着を付けて議論を前に 進めたい」との思惑もあります。