建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み健康被害を受けたとして東京、埼玉、千葉の元建設作業員308人(うち199人死亡)について、本人と遺族計337人が国と建材メーカー42社に慰謝料など総額約120億円の賠償を求めた訴訟で、東京地裁は5日、国の対策が不十分だったと認め総額約10億6000万円の支払いを命じました。メーカーの責任は否定しました。石綿被害で国の責任を認めた判決は大阪の石綿紡織工場元従業員による集団訴訟の1審であるが、元建設作業員による訴訟では初めて。
始関(しせき)正光裁判長は、石綿の危険性が医学的に確立した時期について、「国は遅くとも昭和56年以降は、事業者に罰則を伴って防じんマスクの着用を義務づけさせたり、作業員に危険性を伝えたりすべきだった。こうした対策を怠ったことは著しく不合理で違法だ」と指摘。メーカーや事業者について「何の責任も負わなくていいのかとの疑問があるが立法政策の問題。血税で被害の一部を補填(ほてん)することを踏まえ、立法府と関係当局に真剣な検討を望む」と述べました。
その上で同年以降に屋内で作業に従事し肺がんや中皮腫になった元作業員158人について遺族を含む計170人に賠償を認めました。吹きつけ工については国の庁舎工事での石綿吹きつけが禁止された後の74年以降を賠償対象としました。
判決について、厚生労働省は「判決の内容の詳細はまだ把握していないが、判決で国の主張が認められなかった点があり、厳しい判決だと理解している。判決内容を十分検討するとともに、関係する省庁と協議したうえで今後の対応を決めたい」というコメントを出しました。
一方、弁護団長を務める小野寺利孝弁護士は「国の責任を認めた点は評価できるが、企業の責任を認めなかったのは不当であり控訴したい。あわせて国会に対しても、被害者を救うための立法的な措置を行うよう求めたい」と述べました。