数年続いた厳しい就職活動に改善の兆しが出ています。2013年春の新卒採用で6月時点の内定率が5割を超え、直近の3年で最も高い水準となりまし た。非製造業を中心に大企業が採用意欲を高めていることに加え、学生が早い段階から中小企業への就職活動に取り組むなど、大企業に偏重していた意識が変化 したことが大きいと言えます。政府も若年雇用の拡大に向け、中小企業への就職を後押しする方針です。
就職情報のマイナビが2012年7月10日に発表した13年春卒の大学生(院生含む)の6月末時点の内定率は、前年比4.2ポイント増の50.3%でした。東日本大震災の影響がなかった一昨年比でもプラスで、調査を始めた10年以来初めて5割を超えました。
ディスコの6月1日時点の調査でも昨年比8.9ポイント増の62.3%でした。6月は多くの大企業で内定が出そろう時期で、順調なスタートを切ったといえそうです。
「身の丈就活」。マイナビでは今年の特徴をこう表現しています。学生が人気企業だけではなく、後回しにしていた中小企業への就活に熱心に取り組ん でいることがわかりました。リクルートワークス研究所によると従業員数1000人未満の中小企業を志望する学生が、大企業の志願者数を14年ぶりに上回っています。
経団連の倫理憲章の見直しで、企業の採用広報活動が例年の2カ月遅れの12月からとなった影響もありそうです。マイナビの三上隆次編集長は「期間短縮の影響で、現実志向の学生が増えた」と指摘しています。
リクルートが7日に都内で開いた中小企業向けの就職イベントには学生約200人が参加しました。ソフトウエア開発のアドマックス(東京・新宿)の採用担当者は「例年に比べ学生の熱意が伝わってくる」と話しています。
足元では企業が採用意欲を強めていることも大きいと言えます。ディスコの調査では5月時点で新卒採用を「増やす」とした企業は32.1%で、「減らす」(12.8%)を上回りました。日本経済新聞の調査では新卒全体で前年比5割増の2000人の採用を計画するイオングループや、過去最多となる大卒670人の採用を見込むエイチ・アイ・エス(HIS)など、海外の強化を狙う非製造業が目立ちます。
ただ、中長期的にはグローバル化によって、製造業を中心に大企業の国内採用が大きく伸びる可能性は低そうです。政府は6月にまとめた若者雇用戦略の柱に「雇用のミスマッチ解消」を据えました。大学とハローワークの連携を強化し、大学生に地域の優良中小企業を紹介していきます。中小企業経営者による大学への出前講座やインターンシップにも力を入れています。
今春のリクルートワークス研究所の調査では、大企業の求人倍率は0.73倍ですが、中堅・中小企業では1.79倍と高くなっています。大学生の意識をさらに中小企業に向けることができれば、就職率の底上げにつながりそうです。