2012年度の都道府県ごとの最低賃金は、全国平均で前年度より12円引き上がり時給749円になりました。上昇額は2年ぶりに10円を超えました。所得増による景気への影響が期待される半面、賃金の急激な引き上げは中小企業の経営を圧迫しかねません。政府が掲げる「全国で最低800円」の実現には、中小企業の稼ぐ力の向上が課題になります。
10日に富山県の審議会で答申が出て47都道府県の改定額が出そろいました。中央審議会が決めた目安は全国平均で7円の引き上げでしたが、東日本大震災の復興需要や景気の持ち直しで上乗せにつながりました。沖縄など賃金水準の低い地域の上げ幅が大きかったということです。政府が目標とする800円を上回ったのは東京、神奈川、大阪だけで、最低の高知や島根は652円でした。
最低賃金引き上げの恩恵を受けるのは、パートやアルバイトです。特に外食や小売りなど流通業で働いている人が多いです。これらの業界は総じて利益率が低いとされています。企業の稼ぐ力が向上しないまま賃金水準を引き上げることには限界もあります。政府は中小企業の競争力を高める政策を進め、最低賃金を引き上げる外部環境を準備できるかも課題になっています。
日本の最低賃金は先進国の中で最低水準とされています。第一生命経済研究所の永浜利広主席エコノミストは「企業収益の改善ペースに合わせて日本の最低賃金を緩やかに上げていく必要があるのではないか」と指摘しています。