労災事故の遺族に損害賠償が認められた場合、別に受け取った遺族補償年金を賠償額からどう差し引くかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷 (裁判長・寺田逸郎長官)は3月4日、「損害額(元本)から差し引く」との判断を示しました。裁判官15人全員一致の意見で、遺族側に支払われる賠償額が より少なくなる結果となりました。
遺族補償年金などの労災保険が支給された場合、遺族側に支払われる額が2重取りにならないように、その支給額を労災による損害額から差し引く必要 があります。遅延損害金は、労災などが起きた日から賠償金が支払われるまで発生するため、損害額そのものと遺族補償年金を相殺すると、遅延損害金が目減り し、賠償額全体が低くなります。
これまでは、遺族側が受け取った労災保険の遺族補償年金を損害額から差し引くか、損害額に遅延損害金を加えてから差し引くかをめぐり司法判断が分 かれていましたが、大法廷は「支給が著しく遅れるなどの特段の事情がない限り、遺族補償年金は元本から差し引くのが相当」と判断し、労災保険の支給額を損 害額の元本から差し引く算定方法に統一しました。